HAL財団

「家業」から「地域企業」へ

WEB版HALだより「テキスト版」

2024年7月17日号 (通算24-16号)

夏にも開催決定!HALクロストークセッション第3弾
これからの農業のビジネスを考えるトークセッション

満員御礼!

トークセッション第2弾は、大好評につき定員に達しました。
また、興味のあるセッションを企画します。
ご応募、ありがとうございました。

2023年、2024年の冬1月に開催したトークセッション。早く開催してほしいとの声を受け、ついに、真夏の8月に第3弾を開催します。 キーワードは引き続き「できる・勝てる・儲かる・続く」だ!です。

農業界は肥料、飼料のかつてないほどの急激な高騰に見舞われ、さらに人件費の上昇、海外産原材料・飼料の輸入不安定という状況にあります。そのうえ、近年は大雨、干ばつ、高温と異常気象の連続。その解決策は今までの農業政策、農業技術だけでは解決が難しくなっています。しかし、その一方で従来から地道に農業分野と連携を視野に活動を行ってきた企業、団体も存在します。多くの知見、意見で解決策を見出すために、第3弾となる「トークセッション」を敢えて夏に企画しました。

 

【開催概要】

日時:2024年8月19日(月)
11時受付
12時開演 :
12:00~17:00 スピーカーによるテーマトーク
17:00~18:00 整理の時間
19:00~ トークセッション 2部 (懇談を兼ねて会費制)

参加費:無料(懇親会は会費制:5,000円(税込み)を予定)

会場:かでる2.7 4階 大会議室

住所:札幌市中央区北2条西7丁目 道民活動センタービル 4階

 

【申し込み方法】

事前メールで受け付け(先着順)

受付期間: 2024年7月9日(火)正午 ~  定員に達し次第終了

申し込み先:HAL財団 専用受付メール moon@hal.or.jp

★お名前、メールアドレス、所属(屋号、会社、団体)、ご住所、電話番号、懇親会の参加・不参加を記載の上、お申込みください。先着順です。
参加者には別途メールをお送りします。

定員:農業従事者:70人(MAX)
関連企業・団体:20人(MAX)
スピーカー、運営:30人

スピーカー(話題提供者) (企業、団体名の五十音順) 2024年7月17日現在

・アサヒバイオサイクル(株) サステナビリティ事業本部
アグリ事業部長       上籔 寛士氏
アグリ事業部担当部長   北川 隆徳氏

・合同会社 共和町ぴかいちファーム 代表社員  山本 耕拓氏

・株式会社KRI スマートマテリアル研究センター
エコマテリアル研究室 上級研究員 鈴木 一充氏

・トゥリーアンドノーフ株式会社 代表取締役 徳本 修一氏

・株式会社NEWGREEN 代表取締役COO 中條 大希氏

・バイオシードテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長  広瀬 陽一郎氏
アドバイザー   池田 陸郎氏

・株式会社バイオマスレジンホールディングス
代表取締役/CEO  神谷 雄仁氏
取締役副社長  ナカヤチ 美昭氏

・福田農場(網走市) 農園主 福田 稔氏

・別海バイオガス発電株式会社  営業部長 小菅 加奈子氏

・株式会社ペントフォーク 代表取締役社長 伊藤 武範氏

・株式会社ヤマザキライス 代表取締役社長  山﨑 能央氏

 

実行委員会メンバー

・安藤 智孝さん(清水町)   ・伊藤 勲さん(江別市)
・伊藤 儀さん (弟子屈町) ・伊藤 敏彦さん(別海町)
・今井 貴祐さん(小清水町) ・川合 雅記さん(秩父別町)
・北川 和也さん(中富良野町)  ・木村 加奈子さん(別海町)
・神馬 悟さん (南幌町) ・福田 稔さん(網走市)
・山本 耕拓さん(共和町) ・島 哲哉さん(富山県高岡市)

 

進め方

1 スピーカーからそれぞれの立場で北海道農業とどのような関わり、新たな関わりを持とうとしているのかをお話してもらいます。
2 会場参加者から随時質問を受け付け、トークセッションをします。
3 スピーカーと個別の対応を希望する方は、セッション終了後に時間を設けます。

 

主催 一般財団法人 HAL財団 / クロストークセッション実行委員会
協力:アサヒバイオサイクル株式会社

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/2007/

2024年7月9日号 (通算24-15号)

中村桂子講演会
いのち()づる生命誌講座(その3)を開催

6月29日(土)、青空が広がる札幌で中村桂子いのち()づる生命誌講座(その3)を開催しました。会場となったJRタワーホテル日航札幌には、事前にお申込みのあった130名の受講者で満員になりました。
昨年に引き続き3回目となるいのち()づる生命誌講座は、多くの方に生命そして人間の本質を理解する貴重なものになったのだと思っています。今回の講演会のテーマは「農業に学ぶ生きものとしての人間の生き方」。

札幌での講演会

受講者からの声の中には「農業科を楽しく学ぶ生徒さんたちが思い浮かびます。楽しく学べるということは、学ぶ環境もそうですが、先生や関わる大人の皆様と信頼関係が築かれているからだろうとも思いました。」「子どもたちだけでなく、我々大人も、人間が本来持っている共感や想像力を強化すれば戦争も殺人も起こらないのではないでしょうか」という感想も寄せられました。

美唄市東小学校での講演会

前日の28日(金)には、美唄市東小学校で東小学校、中央小学校の児童を対象にした講演会が行われました。美唄市は、道内で唯一「農業科」を取り入れている地域です。講演会を受けた児童は、5月下旬に田んぼで田植えをしたばかり。どの児童も中村先生のお話を真剣に聞いていたのが印象的でした。
HAL財団では、今後も「農業」を感じる、「農業」を考える講演会を企画していきます。ご期待ください。

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/2000/

2024年7月2日号 (通算24-14号)

Fビレッジ クボタアグリフロントと岩見沢農業高校との連携開始

Fビレッジ内にある農業学習施設「クボタアグリフロント」は「次世代の農業を担う人材の育成」、「農業を中心としたコミュニティの創出や人材交流」といったテーマを掲げ、様々な活動に取り組んでいます。その活動の一環として岩見沢農業高校と連携し、敷地内の露地菜園エリアにベジタブルガーデンを計画・施工することになりました。

岩見沢農業高校からは、環境造園科と農業科学科の生徒が参加。環境造園科の生徒がガーデンの設計をし、農業科学科の生徒が作物を植えていきます。

ガーデンを整える環境造園科の生徒たち

落花生を植える農業科学科の生徒たち

生徒たちは、Fビレッジという大勢の人が訪れる場所に、自分たちの手で、ベジタブルガーデンを計画・施工したことを喜んでいました。今後、このベジタブルガーデンがどのように育っていくのか、それぞれの作物の成長とともに楽しみです。

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1992/

2024年6月25日号 (通算24-13号)

「農業科」授業に協力

美唄市では、小学校の授業に農業を取り入れ農業を通じた子どもの教育に取り組んでいます。小学校の総合的な学習時間を活用した「農業科」授業は成功も失敗も含めたトータルとして“農業で学ぶ”ことを目ざす画期的なものです。

2024年5月22日(水)、23日(木)の2日に分けて、中央小学校、東小学校の2校の児童99名が田植えを行いました。

この授業の受け入れは、市内で稲作を行っている齋藤実さんの田んぼで行われました。天候に恵まれた今回の田植え。児童たちは自分が植えた苗が分かるように「木札」を表札替わりに土に差し込みます。

田んぼは市内中心部にあるので秋の収穫時期までの間、下校時に寄り道になるのかもしれませんが様子を見に行くこともできます。また、休日には保護者の方と一緒に成長の過程を見ることができるでしょう。

なお、今週末6月29日(土)には、この「農業科」の出発点になった生命誌研究家の中村桂子さんの講演会が札幌市で開催されます。
この講演会の模様は、後日HAL財団公式Youtubeで公開いたします。

中村桂子 いのち愛づる生命講座 その3
「農業に学ぶ生きものとしての人間の生き方」

日 時:2024年6月29日(土)12時30分~14時30分 (開場12時00分)
場 所:JRタワーホテル日航札幌 36階 スカイバンケットルーム「たいよう」
(札幌市中央区北5条西2丁目5番地)

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1982/

2024年6月18日号 (通算24-12号)

別海バイオガス発電(株)と消化液の特徴

*今回の「WEB版HALだより」は、別海バイオガス発電株式会社の小菅加奈子さんにお願いしました。
それでは、この先はレポートになります。
なお、この文章は、筆者及び筆者の所属する団体の見解であり当財団の公式見解ではありません。

別海バイオガス発電(株)と消化液の特徴

レポート 小菅 加奈子

今回は、別海バイオガス発電(株)と消化液(商品名:グングンモピカ)の特徴について紹介します。
最大の特徴は55℃の高温発酵としている点になります。
55℃の高温発酵によりふん尿の中にある雑草の種子は100%不活性化し、さらに、大腸菌/サルモネラ菌等はその後の検査では検出されていません。

従って、発酵が終わった後に使用する「再生敷料」や「消化液」は安心してお使いいただくことができるのです。さらに、別海バイオガス発電(株)では3か月に1度、消化液の菌分析(大腸菌/サルモネラ菌/ヨーネ菌)を実施。再生敷料は月に1度、大腸菌の分析を実施しSNSを通じて公開しています。

また、安全面だけではなく、高温発酵により消化液の腐植物質(腐植酸/フルボ酸)は増加する研究結果もあります。腐植物質は土壌の団粒構造を形成し、発芽や伸長の促進、土壌中の微量要素の活性化を豊かにさせる効果があると言われています。

別海バイオガス発電(株)2つめの特徴は固形ふん尿をメインに処理していることです。現在、国内のバイオガスプラントでは、液状のスラリーをメインに処理する方法が主流ですが、別海バイオガス発電(株)では繋ぎ牛舎農家が多いという地域性もあり固形ふん尿をメインに処理しています。固形ふん尿は敷料(寝ワラ)が多く含まれているため、プラント内でワラを細かくするために多くの工程を必要とします。

処理が大変な一方でメリットもあります。発酵が終わった消化液には固形分(ワラ)が多く含まれ液体肥料としての成分数値(N:窒素、K₂O:カリ)が他のバイオガスプラントより少し高くなっています。

元・別海で消化液を利用している酪農家の皆さんは「固形物が多いから即効性だけではなく持続性もあるし、肥料としても効果は十分にある。固形物が多いけど粘性はないから牧草の葉っぱに付着しにくく、サイレージ品質が悪くならない」と好評です。

そんな特徴を持つ別海バイオガス発電(株)の消化液は「グングンモピカ」という名前で特殊肥料登録されています。

腐植物質を含む「グングンモピカ」皆さんも使ってみませんか?


プロフィール

小菅 加奈子(こすげ かなこ)
別海バイオガス発電株式会社 営業部長
URL: https://www.jfe-et.co.jp/bbp/

〒086-0216
北海道野付郡別海町別海2番地
TEL:0153-79-5552 FAX:0153-79-5553
お問い合わせMail:kosuge-kanako@jet.jfe-eng.co.jp
フェイスブック:https://www.facebook.com/profile.php?id=100092262746393

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1972/

2024年6月13日号 (通算24-号外)

満員御礼 中村桂子 いのち愛づる生命誌講座(その3)「農業に学ぶ生きものとしての人間の生き方」

ご案内しておりました『中村桂子 いのち愛づる生命誌講座(その3)
「農業に学ぶ生きものとしての人間の生き方」』は、定員に達しました。

講演の模様は、後日HAL財団公式Youtubeで公開いたします。

またこのような講演会、セミナーなどを企画しますのでご期待ください。

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1959/

2024年6月11日号 (通算24-11号)

生乳生産日本一の町「別海町」にある日本最大級のバイオガスプラント

*今回の「WEB版HALだより」は、別海バイオガス発電株式会社の小菅加奈子さんにお願いしました。
それでは、この先はレポートになります。
なお、この文章は、筆者及び筆者の所属する団体の見解であり当財団の公式見解ではありません。

生乳生産日本一の町「別海町」にある
日本最大級のバイオガスプラント

レポート 小菅 加奈子

北海道の東側にある「別海町」は人口約1万4千人、牛の飼養頭数は約11万頭の日本一酪農業が盛んな町です。約6万ヘクタールに広がる耕地で育まれた乳製品は格別。人より牛が多い街などと呼ばれる「別海町」ですが、魅力は酪農だけではありません。野付湾で獲れる‟ジャンボホタテ”や“北海シマエビ”“ホッキ”などの豊富な魚介類、さらに野付半島や風連湖など自然豊かな場所が多くあり、オジロワシやシマエナガなど希少な野鳥を観察することができる「海と大地に夢があふれる町」なのです。

そんな酪農・漁業が共存する「別海町」では、環境に対する取り組みの一つとして「バイオマス産業都市構想」を2013年に策定し、国からバイオマス産業都市の一次選定地域として認定されました。さらに、良好な水環境を保全し、農業と漁業が将来にわたり共存しうる社会を構築することを目的とした「別海町畜産環境に関する条例」を他の自治体に先駆け制定(2014年(平成26年)4月1日施行)。2015年には、日本最大級のバイオガスプラントである別海バイオガス発電株式会社が事業を開始しました。
分離された液体は、肥料になり牧草地に散布されます
酪農業だけではなく、漁業や森林等の自然を守ることもミッションの一つとしている別海バイオガス発電(株)は、契約農家70件(2024年4月現在)の家畜ふん尿を適正に処理し、それを電気に変えています。別海バイオガス発電(株)で作られる1日分の電力量は、約24,000kWh。実に一般家庭約2,400軒分の電力量に相当します。

別海バイオガス発電(株)に搬入された家畜ふん尿は、55℃の高温発酵槽内でメタン発酵させバイオガスを生成。そのガスを燃料にして、発電機を動かし電気を作り出すのです。発酵が終わった液は固体と液体に分離させて、再生敷料(固体)と液体肥料(液体)に分けられます。再生敷料は牛の寝床に敷いて、ふん尿と混ざったらまた別海バイオガス発電(株)に搬入されます。

分離された固体は再生敷料になります

液体肥料である消化液は広大な別海町の牧草地に、年に3回程度散布され、消化液で育った牧草を食べた牛のふん尿が別海バイオガス発電(株)に搬入されるという資源循環型社会が成り立っています。

次号では別海バイオガス発電(株)と消化液の特徴について記します。

次号では別海バイオガス発電(株)と消化液の特徴について記します。


プロフィール

小菅 加奈子(こすげ かなこ)
別海バイオガス発電株式会社 営業部長
URL: https://www.jfe-et.co.jp/bbp/

〒086-0216
北海道野付郡別海町別海2番地
TEL:0153-79-5552 FAX:0153-79-5553
お問い合わせMail:kosuge-kanako@jet.jfe-eng.co.jp
フェイスブック:https://www.facebook.com/profile.php?id=100092262746393

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1925/

2024年6月4日号 (通算24-10号)

街の緑化・デザインの考え方を学ぶ ミニセミナー開催のお知らせ

普段、何気なく見ている街中の景観はどのような観点で作られているのか?
今回は専門家を招いてのミニセミナーです。

農業の隣接業界として林業や造園、植木業界があります。
近いようでなかなかその現場のお話を聞く機会は少ないのが実態です。
テレビドラマのセット制作なども手掛ける東京狛江の株式会社和泉園の白井社長をお呼びし、造園業界のお話を伺うセミナーを企画しました。

【開催概要】
日時:2024年7月12日(金)13時半受付
14:00~15:30 講演
その後:質疑応答
参加費:無料
会場:HAL財団 セミナールーム
住所:札幌市中央区大通西11丁目4-22 第2大通藤井ビル4階

【申し込み方法】
事前メールで受け付け(先着順)
受付期間: 2024年6月4日(火)~定員になるまで
申し込み先: HAL財団 受付メール:  moon@hal.or.jp

⇒お名前、メールアドレス、所属(屋号、会社、団体)、ご住所、電話番号を記載の上、お申込みください。

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1889/

2024年5月28日号(通算24-9号)

HAL農業賞アンバサダーに林匡宏氏就任

HAL農業賞を広めてくれるアンバサダー。今まではフリーアナウンサーの渡辺陽子さんだけでしたが、今年度から新たに林匡宏さんにもアンバサダーをお願いすることになりました。
5月21日にHAL財団理事長の磯田憲一から委嘱状が交付されました。

林さんと磯田理事長

林さんは、ディスカッションの内容をその場でイラスト化する「コミュニカティブ・ドローイング」と言われる手法を使い、多くの地域のまちづくり、社会実験を手掛けてきました。現在も多くの仕事に関わり、農業分野では酪農学園大学のプロジェクトマネージャーも務めています。

今後、HALのスタッフとともに農業現場にお邪魔する機会も増えます。私たち共々、よろしくお願いいたします。

林さん  磯田理事長  渡辺陽子さん

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1872/

2024年5月21日号(通算24-8号)

「オーガニック三兄弟」宣言!

*今回の「WEB版HALだより」は、野菜ソムリエとして大活躍の吉川雅子さんにお願いする第2弾となります。
なお、この文章は、筆者及び筆者の所属する団体の見解であり当財団の公式見解ではありません。

「オーガニック三兄弟」宣言!

レポート:吉川 雅子

2024年3月20日、入植110年、法人化50年を記念した「(有)大塚ファーム」主催の「農業未来フォーラム2024」に参加しました。私は、この日、3人の若者のために、先祖がこの地を選び、長い時間をかけて多くの応援者や支持者を集めてきたのではないかと思うような瞬間を目の当たりにしました。

200名あまりの会場で、「僕たちは大塚ファームの5代目となり、これからはオーガニックが当たり前になるように、そしてアジアを代表するオーガニックファームにしていきます。僕たちは『オーガニック三兄弟』です」と力強く宣言。とても好感の持てる閉会の挨拶でした。

(「オーガニック三兄弟」を宣言する3人)

有機農業への道のり

有機農業を牽引する4代目

大塚ファームの4代目の大塚裕樹さん。曽祖父から続く伝統を引き継ぎ、時代のニーズを捉えた農業経営に挑んできました。20歳から農業を始め、「オーガニック新篠津」を設立したのは1997年、23歳の時です。

私も大好きで、私を農業の世界に連れて行ってくれた故・相馬暁氏。裕樹さんの背中を押していたのも相馬氏でした。相馬氏は生前、「北海道農業の使命は、その立地条件である自然環境や気候を十分に踏まえたうえで、そのクリーンな生産環境を最大限活用し、消費者の求める安全でおいしい、良質な農産物を生産することである」と、よく口にしていました。

また、著書『2020年農業は輝く』には、「2020年、農業が蘇る。だから、農業者は明確な展望を持て! とりわけリーダーと自負する人々は、自信を持って展望を、輝 く農業の未来を語れ。農業こそ未来産業であると。そして自らが輝くことだ」と冒頭に記されています。

私は、常々、相馬氏は裕樹さんをイメージしてそんなことを語っていたのではなかったのかなと思っています。

相馬氏の著書『2020年農業が輝く』『相馬暁先生の講演記録』

両親はとてもカッコイイ!

21歳の悠生(ゆうき)さん、19歳の皓介(こうすけ)さん、17歳の然(ぜん)さんの3人が揃う日にお話を聞きに伺いました。「僕たち、とても仲がいいんです」と並んだ3人の第一声。そういえば、大塚ファームに何度か寄らせていただいた際に、時々、家の前で仲よく遊んでいた小さな3人を目にしたことがありました。

業績が認められて、数々の賞を受賞してきた大塚ファーム。2014年には、「日本農林水産祭(天皇杯)」で「日本農林漁業振興会会長賞」を受賞。同時に、新設されたばかりの「輝く女性特別賞」を3人の母である早苗さんが受賞しました。

小学校1年、3年、5年だった3人も、東京のNHKホールで行われた受賞式に同行。そこでは大勢の人の前で登壇し、自身の農業を語る父、そして、初代「輝く女性特別賞」を受け取る母の姿がありました。キラキラ光る二人がとてもカッコよく見えたそうです。

仲よし三兄弟の今

多忙な現在の3人

悠生さんは、タキイ園芸専門学校で農業の基礎を学んだ後、去年から大塚ファームで父の下で仕事をしながら、自身が目指す目標に向かって進んでいます。

「長男であることから、小さな頃からリーダーシップが取れるようになるために、リーダーというリーダーはほとんど経験してきました」。

皓介さんは、高校卒業後すぐにフィリピンに語学留学。

(3人の撮影日はあいにくの小雨・・・左から然さん、悠生さん、皓介さん)

「日常会話は可能なレベルになりました。2年ほどオーストラリアやアメリカに留学し、働きながらもっと世界の農業を見たい、体験したいと思っています」。

然さんは、苫小牧工業高等専門学校の3年生。電気電子工学を専攻しています。

「スマート農業に対応するための知識を学んでいます。他にも経営などにも興味があります」。

然さんは、私が取材に伺ったその日の午後には、学校の寮に戻っていきました。

3人でバトンを受け取るということ

2014年のW受賞でのカッコイイ両親の姿を目にしたことで、漠然としていた将来の夢がはっきりと“農業を志す”に変わります。

小さい頃より、父からは「1人で農業をするのは大変だし、2人だと喧嘩をしてしまう。でも、3人で助け合いながら農業をしたら強いぞー。」と、母からは「兄弟を産んであげたことが一番のプレゼントだよ。」と聞かされてきました。

「せっかく(父や先祖が築いてきた)すばらしい環境があるのだから、それを利用しない手はない。それに、最近、“3人で何かやることがカッコイイ”んだよね」と口を揃えて教えてくれました。「レタス三兄弟」や「レンコン三兄弟」など、「〇〇三兄弟」という、自分たちよりも少し先輩で成功している生産者らをイメージしているそう。

(この並び方が小さな頃からの定位置らしい)

実は私、まだ3人が小さな頃、裕樹さんからは「将来、子どもたちが継いでくれるかどうか。継いでくれるような農業にしないといけない」という言葉を何度も聞いていました。裕樹さんは3人が輝ける場を必死で作ってきたのだと思います。将来を見据えたすばらしいファミリーヒストリーです。

3人の夢

悠生さんは現在、農繁期は大塚ファームで修行し、農閑期は留学や国内の生産者のところに研修に行くのを4、5年ほど繰り返して、農業者としての腕を磨いていくそうです。2年間のタキイ園芸専門学校でこれから目指すべき場所を見つけることができ、そこに辿り着くために今何をすべきかが段々と見えてきたそうです。

兄弟もそれぞれ違う分野で切磋琢磨しながら力を付けていますが、それが合わさった時にはとてつもない力が生まれるのでしょう。

(スタッフと一緒にハウスを組み立てる悠生さん)

(ロータリを操縦する皓介さん)

大塚ファームのホームページには、こう書かれていました。

「2030年に3人の息子に農場経営を託し、2033年、60歳で引退し、その後は、6代目(孫)の育成に人生をかける。大塚ファームは、100年から200年へ、次の時代にもお客様に安全で安心できる美味しい農産物の生産責任から絶対に逃げたりしません。誰かが農業をやらなければ行けない現実から逃避せず、一歩一歩確実に進化していきます」。

3人の夢は、両親の夢でもあり、先祖の夢でもあるのですね。

(「農業未来フォーラム2024」で開会の挨拶をする裕樹さん)

3人の目標

大塚ファームは現在、農場面積18haに、ハウス60棟で約20品目を栽培しています。

「大塚ファームは、日本という壁を越え、世界へ進出し、アジアを代表するオーガニックファーマーを目指しています。並大抵なことではないと思いますが、僕たち3人にはどんな困難にも立ち向かうことができるチームワークがあります。夢を叶えるための強い意志と気持ちがあります」と、力強く言う悠生さん。

将来は、自分たちならではのオーガニックファーマーのビジネスモデルを作るのを目指していますが、そのために、今はSNSなどを利用して“発信”に力を注いでいます。

「発信を通して、全国の生産者と繋がって刺激し合いたい。そして、自分たちのコアファンを獲得して事業の幅を広げ、仲間を増やしていくのが目標です」。

何年もかけて自分たちのファンを増やし、ひいては一緒に働きたいと思う人も増やしていくのも大事なことだと言います。若いのに、自己ブランディングの大切さをよく考えています。

(育苗中のミニトマト。55棟のハウスのどこかに定植されるのを待っています)

フォーラムが終わって、裕樹さんに「相馬先生に見せたかったね」と宣言のことを話したら、「どこかで見ていると思う」と。『2020年農業が輝く』は裕樹さんへの応援歌ならぬ応援本だったと改めて感じました。


プロフィール

吉川雅子(きっかわ まさこ)
マーケティングプランナー

日本野菜ソムリエ協会認定の野菜ソムリエ上級プロや青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格を持つ。

札幌市中央区で「アトリエまーくる」主宰し、料理教室や食のワークショップを開催し、原田知世・大泉洋主演の、2012年1月に公開された映画『しあわせのパン』では、フードスタイリストとして映画作りに参加し、北海道の農産物のPRを務める。

著書

『北海道チーズ工房めぐり』(北海道新聞出版センター)
『野菜ソムリエがおすすめする野菜のおいしいお店』(北海道新聞出版センター)
『野菜博士のおくりもの』(レシピと料理担当/中西出版)
『こんな近くに!札幌農業』(札幌農業と歩む会メンバーと共著/共同文化社)

この記事のURLhttps://www.hal.or.jp/column/1852/