広報

調査研究レポート

ベスト経営ウォッチング
第5回HAL農業賞神内大賞 有限会社和田農園(帯広市)
ベスト経営ウォッチング

 平成十七年から始まった「HAL農業賞」も今年で五回目となった。
北海道内で農業関連の表彰制度はホクレン主催のものが昨年度で幕を閉じ、現在では「コープ農業賞」とHAL財団の「HAL農業賞」だけになった。HAL農業賞は、企業的経営の農業を推進させていくうえで、模範となる農業企業・団体に贈られるもので、農業経営者のみならず、流通や販売を行う企業にとっても注目されている表彰制度である。
 過去四回の受賞企業は、それぞれ優秀な企業活動を行い、その後も成長を遂げている。HAL農業賞の特徴の一つには「現時点のみならず、将来性をも評価する」という点があり、候補企業にとっては受賞=結果ではなく、受賞=将来ということも注目すべき点である。 
このHAL農業賞の第五回目の大賞(神内大賞)受賞企業は、自社で畑作生産から販売まで一貫して行っている帯広市の有限会社和田農園がその栄誉に輝いた。

《自立した経営》

  和田農園では、ゴボウ、長イモを主力生産物とし、それ以外にカボチャ、バレイショなどを栽培している。畑作王国である十勝地方では、一般に小麦、てん菜、大豆、バレイショなど、いわゆる「政府勧奨作物」の栽培が盛んである。しかし、同社はあえてそれらをほとんど作付けしていない。代表の和田氏は「自分が考える、味で勝負する」という言葉にふさわしい作物の選択を行っているからである。それは言い換えれば補助金や助成金とは無縁の世界を選択したことでもあり、筆者はそこに和田氏の経営に対する意気込み、信念を感じるのである。「自分の力量において経営を行いたかった」と言うが、それは自信の裏打ちのあってのことであろう。
和田氏は、栽培する作物を見極め、自社内に選果場や倉庫を建て、自らで営業を行い、販路開拓をしてきた。決して容易なことではないことは想像に難くない。しかし、その結果政策に振り回されることなく、補助金などに依存しない安定した経営を実現したのである。まさに自立した経営の実践である。

《驚異的な出荷率》

 和田農園の特筆すべき点は、その出荷率の高さである。驚くことに出荷率は九八%。ほぼ、全量と言ってもいいだろう。それを支えるのが企業的経営に欠かせない、経営資源の一つである「モノ」を的確に充実させたことである。選果場や倉庫などの施設設備を整備し、生産から販売までを自社で賄えるようにすることで、いわゆる規格外品も規格品と遜色ない価格で販売が可能となったという。このあたりは企業秘密であろうが、選果と販売をリンクさせることで、マーケットにあった選果を行っていることが想像できる。
 加えて「ヒト」という経営資源も忘れてはならない点であろう。和田農園では施設設備を有効に活用することで、年間労働の平準化を可能とした。つまり、従業員の通年雇用を実現したのである。これにより選果・梱包などそれぞれに適正人員配置を行い、「モノ」を効率的に運用しているのである。その結果が、ゴボウや長イモの製品出荷率の高さにつながっているのである。

《特徴的な生産物》

 消費者に求められる味を追求しつづける和田氏は、作物の原点ともいえる土壌を重視している。土壌の持つ活性力を取り戻すため、毎年土壌分析を行い、魚粕や昆布などの「海のもの」、米ぬかや菜種粕など「山のもの」などを使い土中のミネラルバランスを調整するなど工夫を重ねている。栽培するゴボウを例に取ると、通常一三度程度とされる糖度が、和田農園では二〇度前後と非常に高い糖度のものを作りだしている。そのため、帯広市内の有名菓子店で菓子原料としてゴボウが扱われるほどである。このように徹底した土壌管理のほか、農薬や化学肥料の使用を慣行の半分程度まで減らして農産物を栽培し、消費者への訴求力を高めているのである。

《沿革から見える経営手腕》

 和田農園は現在三代目の和田政司氏が代表である。当初は、十勝地方では一般的であった畑作と乳牛の複合経営。昭和五十年代後半までそのスタイルで行っていたという。しかし、酪農経営がスケールメリットを追う時代に突入していくと、複合経営の限界を感じ、品目を絞り込んだ畑作専業を選んだという。そして、安定経営をめざし、平成九年にそれまでの個人経営から法人経営に転換。翌十年には農地拡張・人材雇用といった規模の拡大に伴い選果場、倉庫設備、機械導入などに着手。大規模な農地で生産し、自社で選別から出荷を一貫して行える環境も整えていったのである。現在の耕地面積は一〇二ヘクタール。経営を引継いだ時点が一八ヘクタールであったというから、三五年で実に五倍以上の農地を所有するに至ったのである。政府勧奨作物に頼らず、この成長を見ると、如何に和田氏の経営手腕が優れたものであるかが分かる。

《経営の指向》

  驚異的な製品出荷率の秘訣は、和田氏が自ら東京のスーパーを筆頭に、コンビニチェーン、道内のスーパーや菓子屋などに至るまで、年間七〇回にも及ぶ営業を重ね販路を開拓した努力の結果である。自社販売率がほぼ一〇〇%というから、まさに生産から販売までを自社完結で行っているのである。
 和田農園のこのような経営手法は、補助金に頼らず政策に左右されない自立した経営を念頭に置いた結果であり、さらに如何に自社でできることを事業に取り入れてきたかということであろう。畑作においては自社で一貫の選果・販売は困難であるといわれる。しかし、困難と不可能は別であるというのを示したのが和田農園である。同社のますますの発展を期待するとともに、同社に追随する企業が現れることが望まれる。

平成22年1月1日号『月刊ニューカントリー』670号掲載
▲ページ上部へ
Copyright (C) 2005 Hokkaido Agricultural Laboratory for Business Development