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調査研究レポート

ベスト経営ウォッチング
第4回HAL農業賞神内大賞 有限会社西神楽夢民村(旭川市)
ベスト経営ウォッチング

 WTO問題、原油高に伴う飼料や生産資材の高騰など、今年は農業を取り巻く環境が非常に厳しい年であった。そして、それは言い換えれば農業経営の手腕の見せどころの年と言える年でもあったのである。

《道内有数の農業地域で事業展開》

 HAL農業賞の中でも、実践的な企業的経営活動を展開し、その実績が特に優れている企業に贈られるのが、財団設立者の名前にちなんでつけられた神内大賞である。
 第一回目の谷口農場(旭川市)、第二回目は苫前町の(有)無限樹、そして第三回目は幕別町の(有)ホープランドと誰もがその先進性を認め、また模範的な活動を認める企業が受賞してきた。
 そして、今年の第四回HAL農業賞神内大賞を受賞したのが、旭川市西神楽の農業生産法人(有)西神楽夢民(ルビ:むうみん)村である。会社設立は、平成十三年と新しいが、前身となる任意団体としての活動は、平成六年から始めており、すでに一〇年以上の事業活動を展開してきているのである。
 ご存知のとおり、旭川市は北海道でも有数の米作地帯である。また同社の所在する西神楽は特に旭川郊外の農業地帯であり、米作、畑作、野菜栽培が盛んな地域である。そのような地域で、ほかとは違った経営展開を行っていくのには、どのような視点があったのか、そしてそれを実践に移して行ったのかは、非常に興味のあるところである。

《夢のある経営》
 夢民村。名は体を表すというが、この企業名こそが、同社の企業理念とも言えるであろう。そして、驚かされるのが社長の島秀久氏の名刺である。「代表取締役村長」 、まさに、西神楽夢民村は、一つの村であり、代表は村長なのである。この夢ある経営こそが、多くの事業展開の原動力になっており、また村長のリーダーシップが組織をけん引していく大きな要因になっているのである。

《明確な組織運営》

 西神楽夢民村の会社組織図を見ると、部門ごとの責任体制が整っていることが一目瞭然である。部門は、総務部、販売部、畑作部、青果部、稲作部、花卉部の六部体制。それぞれに、責任者である部長を配置し、さらに課長職を配置しているのである。多岐に渡る事業運営を明確な組織体制で行うことで、責任が生まれ、組織としての活動が円滑に進んでいることが、西神楽夢民村の強みであろう。

《将来を明確に見据え》

 多くの農業法人でも同様のことがいえるのだが、西神楽夢民村も地域の個人経営農家が集まり法人化した協業型法人である。法人化前の個々の所有耕地は、六ヘクタールから四〇ヘクタールとバラバラであり、もちろんのことながら、経営方針もバラバラであった。しかし、道内有数の稲作地帯とはいえ、この辺りでも離農、後継者不足は深刻な問題となっている。現在は、西神楽夢民村が離農農家の農地を賃貸などし、経営面積は約一五〇ヘクタールとなった。その上で、今後の課題は補助金等を当てにしない、安定経営、収益確保を目指すという。
 現在は、「きらら397」、「ほしのゆめ」と言った北海道を代表するお米のほか、「あや」、酒造好適米の「吟風」と言った珍しい品種のお米の栽培も手がけている。この吟風は、地元の酒蔵「高砂酒造」で仕込みを行い、純米酒「風のささやき」として販売されている。そのほか、二〇種類を超える野菜やハーブ、花卉栽培などを行っているのである。
 そして、これらの農産物の安定的な販売のために、現在行っている生鮮野菜の直売以外に、今後は、一次加工を行っていきたいとのことである。

《食育や交流に精力的活動》

 西神楽夢民村では、地域密着の経営を目指しており、地域五校の学校給食に野菜を提供。給食を通して、地元の野菜を子供たちが知り、味わい、愛着を持つという食育を展開している。
また、平成十年からは、地元の地域活性化グループの「西神楽グランドワーク」と共同で「夢民村の食卓」という地域交流イベントを開催。会員や地域の女性たちが生産した肉や野菜を使った家庭の味を提供。地元農産品を使った料理とともに、消費者との交流を図るなど、精力的な活動を展開しているのである。
このような活動以外にも、農村という風景、文化を守るための活動、高齢化した農家の収穫作業をサポート、現役を引退した農家が所有する農地を借り受けて放棄農地を地域から出さないようにしていきたいと思いを語る。
 一方、注文に応じた宅配は週に二回。ギフトに至っては、実に九〇%のリピート率を誇るという。
 まさに地域密着と顧客志向が西神楽夢民村の事業の要といえるであろう。

《観光用施設やボランティア活動も》

社長の島さんは、今後はさらに消費者との距離を縮め、交流を深める事を目的に、観光用の宿泊施設のほか、新規営農者を支援するための施設を建てること、地域のボランティア活動も行っていきたいと語る。
一生産者団体としてだけではなく、地域農業・農村を発展させるために力を注ぐ西神楽夢民村は、企業的経営の農業を推進させていく上で規範となる農業企業といえよう。

平成20年12月1日号『月刊ニューカントリー』657号掲載
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