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調査研究レポート

ベスト経営ウォッチング
第2回HAL農業賞神内大賞 有限会社無限樹の経営(苫前町)
農業経営に必要なのはリーダー
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野貴之

今年度のHAL農業賞神内大賞には、留萌管内苫前町の有限会社無限樹が選ばれた。今年で二回目のHAL農業賞は、企業的経営の農業を推進させていくうえで模範(目標)となる農業企業、企業化が進んでいる農業企業、営農団体に贈られるものである。HAL農業賞は、農業の新しい経営スタイルとなる企業的経営に目を向け、さらにそれを促進させる狙いがあるのである。

《食生活の基本担う》

HAL農業賞の中でも、企業化の実践・実績が特に優れている企業・団体に贈られるのが、財団設立者の名前から神内大賞と称して授与されるのである。
昨年の谷口農場(旭川市)に続き、今年は有限会社無限樹と、偶然ではあるが北海道農業法人会議の会長・副会長と受賞が続いたのである。
留萌を過ぎ、1時間ほどで無限樹のある苫前町に入る。風力発電の風車群が圧巻である。かつて開拓のころにはヒグマがたくさんおり、その被害を題材にした地域演劇もあり、ベアロードという名の通りもある苫前。北緯44度に位置し、北海道でも北部にあるが、対馬海流の影響で比較的温暖で、稲作を中心とした野菜作や畑作との複合経営、酪農経営など多様な農業形態を展開している地域である。
そのような気象状況を活かし、食生活の基本である農産品を安全で美味しく、安価で、安定して生産していきたいという無限樹の大川社長。今回のHAL農業賞神内大賞受賞のポイントから同社を紹介する。

《骨のある経営》

表彰式も終え、収穫もひと段落した十月に入り、筆者は改めて無限樹を訪ねた。
同社は、苫前町の三渓地区にあり、地域の水田のうち5割を越える面積を有し、畑を含めた耕地面積は150ヘクタールに達するという。年間売り上げが約2億円の農業企業である。
社長の大川氏は、笑顔と少しばかり大きな声で出迎えてくれた。大川氏の印象は、元気、豪快という言葉が似合う。「今、農業経営に必要なのは、リーダーであり、形だけの経営者ではない」と言い切る姿は、力強さと自信を感じる。
作物は、人が一割、自然が九割という考えは、会社の理念にもなっている「昔からの、あたりまえの作り方を丁寧にきちんとやっている。それらをわかって下さる方に自分たちの作ったものを手から手へ渡していきたい」という言葉につながり、具現化している。言葉だけではない信念と行動がそこから伝わってくるのである。まさに骨のある経営者である。

《楽しいことが光る》

経営テーマとして、3Y・3A・3Jを取り上げている。意味するところは、「夢・余裕・安らぎ」の3Y。「安価・安全・安心」の3A、そして「自主・自立・自由」の3Jである。今でも農業をキツイ・キタナイ・キケンの3Kと捉える人がいるなか、このような経営テーマで農業経営に取り組む姿は、多くの農業者・農業経営者にとって力強い牽引力となることであろう。しかし、大川社長は言う。「つらいから楽しいことが光る」と。
さらに、「夢とは私自身の現実的な夢ではない。従業員みんながそれぞれの夢を持てること、自分の夢や希望を持って仕事ができる農場であるべき」という。無限に伸び行く可能性を農業において実現しようと命名した社名は、これらのテーマのもと、まさに無限に伸びてゆくのであろう。

《経営資源の最適化》

つい数年前まで農業に限らず、多くの企業では経営指標の最重要項目に売上高を掲げてきた。もちろん現在でもその論理は通用し、分かりやすい指標である。しかし、売上高だけでは費用の部分が見えにくい。闇雲に売上高だけを伸ばすことに躍起になり、経費が必要以上にかかっては企業経営が成り立たなくなる。無限樹では、利益率を高める経営を目指しており、作付け作物、人員配置、雇用体系、設備投資などの経営資源を最適化する努力を展開している。そこには、今求められる計数に明るい経営者の姿が見えてくる。

《自負と嘆き》

改めて、同社の経営ポイントを記すと、
(1)明確な経営テーマ (2)多品種栽培に代表されるリスク分散 (3)顧客指向 
さらに、筆者が感じたのは、大川社長の経営センスである。前段で述べた、「農業経営に必要なのは、リーダーであり、形だけの経営者ではない」という言葉は、一歩先を行く経営者という自負と同時にリーダーの少なさを嘆く声でもあろう。今後、この言葉に触発される経営者が現れることを願う。

今回のHAL農業賞神内大賞受賞は、このような経営が繋がったものでる。HAL財団が推進する農業の企業化の先駆的成功例である。

同社の益々の発展と、同社を目標とする北海道の農業法人に期待するところである。

平成18年12月1日号『月刊ニューカントリー』633号掲載
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