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調査研究レポート

企業化へのステップ
第11回 企業化へのステップとは。まとめ1
「どう解決できるか」考え実践
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野貴之

一年に渡る連載もいよいよ今回と次回で終わりである。農業を取り巻く環境が大きく変わる中、北海道の基幹産業について、その新しい方向性を記すというのは、責任重大であったと改めて思う。最後の二回で今までを振り返り、補足があれば記していく。

《事業計画が第一歩》

第一回目では、「企業化された農業とは」と題し、農業経営の新しいスタイルを記した。この編でもっとも述べたかったことは「事業計画を策定できる経営」こそが、企業化農業・企業的農業の第一歩であり、今後企業化を目指す人にとっても、また今、農業生産法人経営を行っている人にも重要なのである。「事業計画」の意義、それに基づく「目標の設定」に至るプロセス。それはただ単にスケジュール表を事業計画にするのではなく、現状分析を行い、目標を立て、それに到達する計画を立てることである。もちろん、その間には、気象や相場など目標達成に影響を与える事象が生じることもあろう。しかし、それらを見越して、吸収できる(リスク回避策を盛り込んだ)計画が必要な事業計画である。また、作付けや栽培の計画については、ある程度浸透していると思われるので、今後は販売についての計画もぜひ作っていただきたい。販売は、出荷がほとんどかもしれない。しかし、収入源を明確にすることが、次年度、それ以降の計画に役立つ。

《経営資源とインフラ》

第二回と第三回では、それぞれ「企業化にとって必要なもの」「農業を活力あるものに」と題し、経営資源や新しいインフラについて記した。企業化あるいは、経営を考えるとき、経営資源をきちんと把握しておくことは経営者として肝要なことである。ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を把握し、それぞれを最適に配分する。家族的経営を行っていると、ついつい人的資源を省みない傾向にあるように思う。しかし、それは間違いである。少なくとも、これから企業的農業経営を目指すのであれば、家族労働にも相応の賃金を払うという計算はしてみるべきである。これは、先に記した「経営計画」で非常に大きなウェイトを占める固定費につながるからである。人件費・固定資産は、一度購入・採用すると、業績不振だからと言って、安易に切り捨てることはできないからである。
さて、新しいインフラについては、なかなか実感や今すぐやってみよう、という意識にはならないものである。今、世の中には3月号で紹介したインターネット、デザインなどを表わすVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)以外にも、多くの便利で効果のあるサービスや技術があるだろう。つまり、これらの動向に敏感になり、活用できるノウハウや人脈が大切になってくるのだ。これからの季節、札幌では様々な商談会や新技術の展示会などがある。それらを見学するだけで、今までとは違った観点で日々の仕事に役立つものがあるだろう。
また、共通インフラ(プラットフォーム)の整備やVIについては、HAL財団で実践的に行っており、特にVIに関してはすでに勉強会を開催している。これらの活用もお勧めしたい。

《地域を守る相互補完》

第四回では「相互補完で農業を活力あるものに」と題し、企業化された農業と個人経営の農業の相互補完関係について記した。これから、様々な政策が展開されていく中、相互補完まで目が届かないかもしれない。しかし、同じ地域で同じ仕事をしていく上では、多くの場面で相互補完の精神が必要になるであろう。産業は地域を守る基盤である。地域の「リーディングカンパニー」という意識が重要になるだろう。

《新しい分野への挑戦》

第五回は、「業態開発と事業サイクル」という題で記した。前四回とは違って、概念的すぎたのではと反省している。しかし、ここでの内容は具体性には欠けるが、今後の企業化という方向には必要不可欠な部分である。つまり、従来の生産に重きをおいた収入構造では、収入が季節変動の大きなものになってくる。企業化とは、一面で捉えると、雇用をし、給与を支払うことでもある。そうなると、季節によって給与が支払えないということもおきかねない。また、一時期の収入を均等に年間を通して配分するのであれば、キャッシュフローの面からも好ましくはないだろう。
農業の現状を見ると、どうしても作物に収入のほとんどを依存している。そこが企業化への最大のネックになるのではないだろうか。それを打破するために、業態開発という、普段はあまり使わない言葉で説明をしたが、つまりは新しい分野への挑戦が必要になってくるのである。
収入基盤・収入源を新たに創造する。つまり「どのように売るのか」を一例に業態開発の視点を記した。販路拡大はもっとも手がけやすい分野であろう。しかし、もっと付加価値をつけるために、加工を行ったり、流通に工夫を見つけ、そのうえで販売をする。加工という新たな業態、流通という業態、それに合わせた販売。業態開発は、仕事の領域を広げていけばいくほど、新たに考え、開発していかなくてはいけないものである。
企業は、「できる」「勝てる」「儲かる」「続く」ことが肝心と書いたが、持続する企業体を維持していくためには、業態開発こそがそれらを可能にしていくと言っても過言ではない。

《あきらめる前に》

企業化ということは、この連載ですべてを語ることができるほどやさしいことではない。筆者自身も企業にいたときには、対金融機関、対顧客と様々な壁にぶつかってきた。そのときに「これは無理だ」と諦めるのか、「どうすれば解決できるのか」では違う。力強い農業の実現のために筆者(HAL財団)は考え実践している。この連載も間もなく終わりだが、これからも多くの皆さんの協力で力強い農業を作り上げていきたいと考えている。

次回は、「まとめ2」と題し、今までのまとめと補足を記す。

平成18年12月1日号『月刊ニューカントリー』633号掲載
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