広報

調査研究レポート

企業化へのステップ
第8回 差別化を考える
勝てる部分を見つけ出す
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野 貴之

《自分のポジションはどこに》

多くの企業では、さまざまな指標を使って自分のポジションを測定している。ポジションの測定は位置づけを明確にするだけではなく、今後の目標、消費者へのパブリシティー(広報・宣伝)、株式会社であれば株主や投資家への情報提供になるのである。

《今のポジションから将来目標を立てる》

いきなり目標をたてることはできない。現実可能か、夢物語なのか、その大きな判断材料が現在のポジショニングである。そして、その指標も経営に関する視点、作物(商品と考えてもいいだろう)に関する視点と複数の指標を持つと良いだろう。
経営に関する指標には、「売上高」「利益」「利益率」などが代表的であるが、ほかにも実に多くの指標が使われている。中小企業庁のホームページなどを見ると、同業だけではなく、異業種との比較もできるので参考すべきであろう。
経営に関する指標を十分に把握することで、多くの計画が具体的に展開できるようになる。設備の購入や圃場の改良などには多大な経費がかかる。従って、やみくもにそれらを行うことはできない。ここで生きてくるのが、経営に関する指標である。これらの指標を活用し、将来進むべき方向が漠然としたものから、明確なものになるのである。
作物(商品)に関する指標の中で最も重視されてきたのが、量ではなかろうか。安定的に食料を供給すると言う観点からは非常に重要な指標であった。しかし、今後は質や消費者、利用者の好みや使いやすさという観点での指標(声)も重要になってくる。出荷だけでは分からなかった消費者の声、要望を定性的、定量的に把握することが肝心である。
このように、経営の観点や作物(商品)の観点から、自分のポジションが明らかになってくる。
売上高は地域で一番だが利益率が悪いとか、消費者には好まれるが囲う業者には利用されないなど、自分(自社)の特徴が現れてくるだろう。そこは強み、弱みを見いだすことができる。将来は、強みをどんどん伸ばすのか、あるいは弱みを少なくしていくのか、といった選択肢が出てくる。このポジショニングを行わないと、強み、弱みが分からず、往々にして目標を持たない無策の経営を行ってしまうのである。

《ポジショニングを差別化に結びつける》

差別化を考えるということは、実は自分の位置を知り、それからどちらの方向に行くのかということである。ともすれば、単純な加工をしただけで付加価値が付いたと判断してしまったり、ブランド化が成功したと思ってしまう。作物や加工品の差別化の成功は売上高や利益率で判断すべきである。
そして、その差別化を効率的に効果的に行えるには、経営という基盤が必要なのである。また差別化がさらに経営を強化していくというサイクルが確立できるか否かの判断が必要である。
差別化は、結局は自分の「できること」「強み」「弱み」といった位置づけから、「勝てる部分」「利益につながる部分」「将来性のある部分」を見つけ出すことである。
本稿を読んでいただいている皆さんの地域にもスーパーマーケットがあるだろう。果物売り場には、海外企業のカットフルーツがあるかもしれない。これからの季節は、各地の果物がおいしくなるが、それでも店頭からカットフルーツが消えることはない。これは、その企業がとっている差別化なのである。地域の果物には「負ける」、しかし「カットフルーツなら勝てる」との判断だ。採算性・消費者の需要、需要に合わせた分量、食べやすい大きさを見極めて商品化し、販売しているのである。
筆者は、この「勝てない部分では勝負しない差別化」という判断もある種の正しさだと考えている。「差別化」=「ライバルとの勝負」ということだ。
今まで、ライバルという存在を意識したことがあっただろうか。ある種の護送船団方式で、同じ方法だけをとっておきたいのではないか?お隣も立派なライバルである。ライバルは決して敵ではない。ライバルがいるからこそ、切磋琢磨し、技術面でも経営面でも向上が図れるのである。
これを地域単位でほかの地域とのポジションを測定したり、あるいは同じ地域のほかの産業と比較したりすると、より明確に差別化のポイントが見えてくる。

《視点を数値化し経年比較を可能に》

差別化を考えるとき、どの業界、どの仕事でもそうなのだが、基本的な機能・性能・品質が備わっていることが大前提である。その上で、差別化を図っていくことになる。
本稿では、差別化のために「経営」という視点、「作物(商品)」という視点の二つを提示した。しかし、ほかの視点もたくさんあるだろう。そして、どの視点でも大切なことは、できるだけ数値化し、経年比較できるようにすることである。これは、差別化だけではなく経営の基礎である。

《差別化の鍵はマーケティング力》

前段で海外企業のカットフルーツの話題を書いたが、これはやはりマーケティング力だろう。従来、農産物の世界では、あまりマーケティングというのが行われてこなかった。販路を広げるのも単に人脈だけではなく、合理的なマーケティングを行う必要があるのだ。
どこで差別化を図るか、それはポジショニングとマーケティング、経営判断で行うものだ。見た目の差別化、価格の差別化では長続きしないであろう。

次回は、「顧客重視」と題し、消費者、利用者との関係について記す。

平成18年9月1日号『月刊ニューカントリー』630号掲載
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