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調査研究レポート

企業化へのステップ
第7回 経営理念
目標、理想を表し共有する
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野 貴之

《目指すものを明確に》

企業の経営理念。これは個人事業でも、企業体であろうと、明確にすることが肝心である。筆者は、企業理念こそ、もっとも大事なそして、業を行うに当たって真っ先に考えなくてはいけないことだと考えている。
ともすれば、企業は、利益のみを追求する組織で収益最大こそが目的であり、企業の存在そのものであるかのような誤解がある。しかし、現代の企業が利潤追求のみで企業活動を行っていては、社会に受け入れられないことは明白である。社会に認められない企業は淘汰され、企業活動を続けていくことはできない。一時的な富を得ることは可能であるかもしれないが。言い換えれば、営利を企業の唯一の目的としている限り、真の利益は得られないのではないだろうか。

《原点に帰る そして時代を見る》

あらためて経営理念について考えることはあまりないのかもしれない。もし、明確な経営理念をお持ちなら、農業や仕事を始めたころを思い出してみるのもよいだろう。どのような思いで、どのような情熱でこの仕事に就いたのだろうか。
品質の良い作物をつくる、収穫量を増やす、安定収入を目指す。いろいろな目標があり、理想があるだろう。その目標や理想を明確にすることが「経営理念」である。そして、従業員がいれば、すべての従業員がその「経営理念」を理解し、共有する。一人ひとりが何を目標に、何を理想に働くのかを表すのが「経営理念」なのである。
経営理念は、その組織にとって大黒柱のようなものであり、事業領域のすべてを網羅できるものになっていることが望ましい。多くの企業では、企業理念を@顧客A社会B出資者や従業員−などを意識して構成している。この区分が、日々の仕事に密接につながってくるのだ。

《理念に基づく計画》

理念は、概念的なものである。その理念を基に毎日の仕事をしているはずなのだが、概念的なものを具体的な仕事に結びつけるのは難しい。そこで、登場するのが、事業計画である。
数年前にある農業者と話をする機会があった。農業は天候に左右されるから、事業計画は立てられないと言う。
果たしてそうであろうか。事業計画は、さまざまな要素を加味してつくるものである。天候、資材の価格、種や肥料の価格、自分ではどうしようもできないことがあり、それらを見据えた(リスクを見込んだ)計画を立てることが重要なのである。そして、その計画は一つではなく、最高の場合、平年並みの場合、アクシデントを予想した場合、この三種類をつくる(想定する)ことが経営していく上では重要になる。アクシデントがあっても持ちこたえることができるようにする。このことが経営者に求められることだろう。
ここまで読み進めると、事業計画というのは、栽培だけの計画ではないことに気付かれたかもしれない。前述の経営理念が@顧客A社会B出資者や従業員−を意識したものであれば、計画も同じようにそれに沿ったいくつかのものができるのである。
純粋な作物栽培に関する計画、それを細分化して農薬や肥料の使用計画、顧客を意識した出荷計画などがあるだろう。
また、永続的に経営を推進するためには、資金計画、施設建設計画、従業員の育成計画なども場合によっては必要になるかもしれない。
さらに、その時々の社会の情勢や要請によって、農業会に求められるものも変わるものである。かつては、食糧を安定的に生産するだけであったが、昨今は安全や安心を求められるなど、時代とともに社会とのかかわりも変化するものである。

《戦略を持った計画を》

このように、理念を基に計画を立てていくのだが、一年間の計画がふさわしいものと、数年間の計画がふさわしいものがある。あるいは、その両方が必要なものもある。
ここでのポイントは、理念に沿った戦略、戦略に沿った計画。これらが、整合性を持っていることが重要なのである。
どのような農業をしたい。だから、何をする。この「何をする」を、仕事のさまざまな側面で考え、まとめていくのである。明確な目標、明確な指針、そして計画。これらが、PDCA(plan−do−check−action)といわれる事業サイクルになるのである。

《明確な理念で成長を》

企業理念、経営理念がはっきりしていなければ、明確な目標はつくれない。明確な目標がなければ、日々の仕事に計画性がなくなる。計画性がなければ、無駄が多い。しかも、反省やチェックもできない。どこが良かったのか、どこが悪かったのか。この客観的な評価を自らが行うことで、仕事を見直し、成長させていくことができるのである。
経営理念などと記すと、大企業の社是をイメージしてしまうかもしれない。しかし、理念は自分自身の思いであり、理想を表したものだ。企業の大小に関係はないのである。そして、家業のであるときには、折に触れ、あるいは家族だからゆえにその思いを言葉にしなくても共有できるのかもしれない。
しかし、企業として事業を進めていくためには、明確な経営理念を表すべきだと考える。そして、従業員すべてが理解し、共有することが、一人ひとりの日々の仕事の意味につながるのである。

次回は、「差別化を考える」と題し、自社のポジショニングの重要性について記す。

平成18年8月1日号『月刊ニューカントリー』629号掲載
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