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調査研究レポート

企業化へのステップ
第6回 新しいインフラの整備
情報通信基盤などソフト面でのプラットフォームづくり
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野 貴之

インフラ整備とは、教科書風に記すと、「交通や通信・電力、上下水道など、社会や産業の基盤になるものの整備」である。つまり、橋や道路、ダムなどを一般的には指し、消費財ではないものである。

《時代遅れになりつつある社会基盤整備》

農業分野での社会基盤というと、土地改良や治水などが従来から行われてきた事業である。農水省の田園整備事業、農業集落排水事業などがこれに該当する。
そして、生活や生産の基盤整備として、農村振興総合整備事業や元気な地域づくり交付金という施策がなされてきた。
従来は、このようにいわゆるハードの基盤を整備して、それを多くの人が利用できることが重要なことであり、それにより格差というものが解消されていったのである。しかし、いつのまにか、社会資本整備事業のために事業が行われるようになったのも、指摘されるところである。特に、北海道のように公共事業依存の割合が高い地域では、その指摘は決して的外れではないように思える。
そして、従来型の社会基盤整備が、時代遅れになりつつあるのではなかろうか。と筆者は思うのである。

《プラットフォームで経費と時間を削減》

近年、プラットフォームという表現が雑誌などで多く使われるようになってきた。これは、駅のプラットフォームとは違うので要注意(もっとも英語のスペルは同じで、同じ意味合いを持つ)。
意味は、立つための台から来ているのだが、コンピュータの世界では、アプリケーションソフトを稼動させるための共通の基本ソフトのことであり、自動車製造では、異なった車種で共通に使う車台のことである。
このプラットフォームが出てきた背景には、何よりも経費の削除と時間の短縮ということが挙げられるよう。三種類の車をつくるときに、同じものをまったく使わないのと、基本となる車台部分(概してこの部分が開発経費も時間もかかる)を共通化するのでは、経費、時間がまったく違うのである。
このように、プラットフォームの考え方をさまざまな分野に取り入れようという動きが高まってきており、最近では、「共通社会基盤(プラットフォーム)」と記述する官公庁のパンフレットも現れてきている。

《農業でもソフト面のインフラ整備が重要》

さて、農業分野の新しいインフラとして、このプラットフォームの考えを導入すると、どのような分野に取り入れれば効果的であろうか。
大胆に分類すると
「従来のインフラ」=ハード重視
「新しいインフラ」=ソフト重視
と言えるであろう。
農業分野でのソフトというとあまりピンとこないかもしれない。しかし、農業も生産から加工、流通、販売と多くの事業形態があり、それぞれで生かせるソフト面でのインフラ整備を考えていく必要がある。
HAL財団が特に力を入れているのは、このソフト面でのインフラ(プラットフォーム)である。今までの連載の中で、VI(ヴィジュアル・アイデンティティー)、情報通信基盤などを紹介してきたが、これこそが、新しいインフラの代表例だと考えている。
さらに、これらの新しいインフラの特徴は、@官公庁が整備する以外に民間事業者も整備可能である、A比較的安価に整備できる(=コストパフォーマンスが高い)、ことである。
ただし、これらの新しいインフラの整備を待っているだけでは、自らの経営方針、事業計画と合致しないこともある。
積極的に世の中の動きを注視する必要がある。今までは、農業というと農林水産省の政策が重要であったが、今後は、総務省(ICT)、経済産業省(VI)、さらにはほかの業界の動向にも注目し、農業分野への応用や取り入れを考えていく必要があるだろう。
言われたことをやる。言われた通りにやる。これでは自社のオリジナリティーを出せないのだ。

《ソフト面のインフラは絶えず進化する》

農業分野での新しいインフラ。これは、単に共通基盤として利用できるだけではなく、付加価値の創造をも狙ったものである。
一人でデザインを考え、ネット販売を行う。これには、おのずと限界がある。高収益や付加価値をつくり出す共通のインフラが今後重要になってくるだろう。そして、それらのインフラは絶えず進化していく。一度つくれば、何十年、何百年も使えるものではない。進化していくインフラなのである。土地改良などのハード面でのインフラ整備とともに、今後はソフト面でのインフラ整備も行っていく必要がある。

《スーパー、コンビニで消費者動向を知る》

デザインやネーミング。今までの仕事とかけ離れているのかもしれない。しかし、商品を求めるお客さまはそこが重要な決め手になっている。生産者であるのと同時に、消費者としてスーパーに行き、農産物を見てみることも大切だ。
筆者がかつて新規事業開発の担当だったころ、毎朝会社に行く途中にコンビニエンスストアに立ち寄り、お菓子コーナーを見ていた。驚くほどの開店で新商品が出て、売れ行きが好調だと見やすい棚に移動される。こういう動きに敏感になることも大事なことだ。そして、消費者は必ずしも自分と価値観が同じではない。新商品を試しに購入し、会社の同僚に見せる。自分とは違った反応、評価が現れる。
新しいインフラの重要性は、消費者と密接なつながりがあることである。今後、プラットフォームは、生産者のみならず、消費者も利用できるものになってくるであろう。
プラットフォームという言葉が、新しいインフラとして定着し、農業会でも活用されることを期待している。

次回は、「経営理念」と題し、経営戦略、事業計画の重要性について記す予定である。

平成18年7月1日号『月刊ニューカントリー』628号掲載
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