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調査研究レポート

企業化へのステップ
第5回 業態開発と事業サイクル
野菜や畜産物を「どのように売るか」が業態開発の第一歩
財団法人 北海道農業企業化研究所
企画・業務部門 企画担当部長 上野 貴之

《スーパーマーケットにもさまざまな業態》

業態開発。あまり聞きなれない言葉かもしれない。似たような言葉に、業種という言葉がある。
業種とは、端的に表すと「何を売るのか」ということ。一方の「業態」とは、「どのように売るのか」ということである。さまざまな業態が現れ、明確な定義がないが、例えば、従来スーパーマーケットと称された大型小売店を見てみると次のようになる。
スーパーマーケット・・・食料品を中心とした、日々の生活必需品をそろえた店舗。
スーパーセンター・・・ワンフロアで食料品、衣料品、住居関連品のすべてがそろう店舗。
総合スーパー(GMC)・・・食料品や日用品のみならず、衣料品や家電、家具など、さまざまな商品を総合的に品ぞろえる店舗。
さらに、これらは全国チェーンの店舗もあれば、地域のみの店舗もある。

《社会環境煮の変化に応じた販売方法》

このように、業態開発がさまざまな業種で行われているのは、現代は、従来の「○○を売る」というコンセプトだけでは、顧客ニーズに必ずしも応えられないという状況にあるからだ。
大きな要因として、少子高齢化、働く女性の増加、ICTなどの家庭への普及など社会環境の大きな変化が挙げられよう。ライフスタイルが多様化し、変化しているのである。
二十四時間営業は、コンビニエンスストアだけではなく、スーパーマーケットにも波及している。筆者の自宅には隣接してスーパーマーケットがあるが、五年前には午前一〇時開店、午後一〇閉店だったものが、三年前には午前一〇時から深夜〇時まで、そして一昨年からはついに二四時間営業になった。二四時間営業スーパーマーケットという新しい業態なのである。

《ターゲットを絞った商品と店舗スタイル》

業態開発に当たっては、(1)明確なターゲット、(2)ターゲットに合わせた商品群、(3)ターゲットに合わせた店舗スタイル、がカギになってくる。
先に記した、二四時間営業のスーパーマーケットは、以前に比べると、総菜や弁当などを増やし、家庭雑貨は減らしたように見える。地下鉄駅に隣接するこのスーパーは、ターゲットを見極め、商品群を改め、そして二四時間営業という店舗スタイルを取り入れたのだ。
農業の分野では、この業態開発をどのように取り入れていけばよいのだろうか。「うちは、出荷がほとんど。売るのはスーパーだから関係ない」という声が聞こえそうだが、果たしてそうだろうか?
出荷という言葉だけで、実は集荷事業者や小売店に「販売」しているのである。単に、野菜や畜産物を「売る」ことから、「どのように売るのか」それを考えることが業態開発の第一歩だ。集荷事業者にせよ、小売店にせよ、消費者であろうとも、「どのように売るのか」が重要なことなのである。
これから夏にかけて道内では道路沿いに農家の直売所が軒を並べる。取れたての野菜や果物、自家製のジャムなどが並んでいる。それは、とても新鮮でおいしいものだ。
私もこれからの季節には、週末のドライブなどで、農家の直売所を訪ねることがある。市価よりも格安で、新鮮であれば、それだけで売れる要素はある。しかし、ちょっとした工夫で売上げを伸ばすことができるのにと思うことがある。例えば、果物。メロン六個で一,〇〇〇円。これは安いか?確かに安いのである。しかし、わが家は二人暮らしである。六個のメロンなど食べ切れないのだ。
つまり、ここでは私はターゲットにはなっていないのだ。いや実は、ここではターゲットは不在なのだ。メロンを売るということだけが目標で、どのように売るのかは二の次。だから、ターゲットはメロンを買う人ではないのだ。
ここに「売る」と「どのように売る」かの差があり、結果的に収益の差になるのである。

《農業生産を出発点に事業を循環》

ここに一例を挙げよう。筆者が調査のために訪れた二ヶ所の酪農経営の比較である(表)。

A 牧 場 B 牧 場
頭 数 600頭 60頭
従 業 員 10人 60人
売 上 高 2億強 6億

A牧場は、牛乳の出荷を主体とした事業を行っており典型的な北海道のメガファームといえよう。一方のB牧場は牛乳のほかに、乳製品の製造販売、さらにはファームレストラン事業も行っている。この表だけでは、単純な比較はできないが、A牧場が多くの設備を有し、また日々の飼料も相当量が必要であることが創造できる。一人当たりの売上高はA牧場のほうが多いのだが、利益率で見るとどういう結果になるのであろう。また、牛一頭当たり従業員という指数を用いれば、両者の比較は興味深いものになる。
そして、B牧場の事業は、牛の飼育、搾乳、牛乳やチーズの製造・販売、それらを扱うレストランと事業が循環しているのが分かる。やみくもに事業を拡大していっているのではないのだ。
肝心なのは、農業生産を出発点に、その産物をどのように売っていくのか、そしてそれが次の農業生産を生み出す仕組みで業態開発を行っていくことなのだと考える。単なるアイデアや一時的なブームで事業の多角化を進めることには筆者は賛成できない。
調査を進めていると、すでに道内の農家でも新しい業態開発を着実に進め、「どのように売るか」を事業の柱にしているところが増えてきている。今後の展開が非常に楽しみなところである。

次回は、「新しいインフラの整備」と題し、収益増を狙ったインフラについて記す予定である。

平成18年6月1日号『月刊ニューカントリー』627号掲載
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