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調査研究レポート

企業化へのステップ
第4回 相互補完で農業を活力あるものに
消費者の視点で強み生かす
財団法人北海道農業企業化研究所企画部企画担当部長 上野 貴之

《「最寄り」「買い回り」「専門」品》

商品の分類で、「最寄り品」「買い回り品」「専門品」という分類がある。なんとなくイメージはつかめると思うが、少し解説を加える。
「最寄り品」は文字通り、最寄りの店で買う商品。食品や雑貨が代表例であり、価格が安いことがポイントとなる。
「買い回り品」は何軒かの商店などを回り、比較して購入する商品。服、家電品などが代表例。そして、価格以外に品質や機能も購買の重要な要素になる。
「専門店」はピアノなどの楽器が代表例。そのほか、自分の気に入ったものという嗜好(しこう)やブランドというのも専門品に入るであろう。価格は高めの傾向にある。
この分類は、すでに古いといわれることもあるが、やはり商品を消費者の観点で見るときには、大事な要素になり、生産者側としては自分のつくる商品がどの位置づけになるのかを考えてみることが肝心である。
ほかの業種を例にこの商品分類と製造者を分類してみたい。
菓子製造業には、全国に名前の売れた大企業、もちろん海外の有名企業もある。百貨店で売られている商品、スーパーで売られている商品、コンビニエンスストアで売られている商品。それぞれ、重なりはあるだろうが違うラインアップで販売されている。つまり、最寄り品、買い回り品、専門品が菓子にはあることが分かる。そして、最寄り品から専門品まで幅広く商品群をそろえているのが大企業であり、中小企業や地域に根差した企業は、どちらかというと、最寄り品、買い回り品、専門品のどこかにスポットを当て製造している。これは自社のポジションをどこに置くのか、また流通や立地といった外部要因をも判断してのことである。
また、最近の流行語でスイーツという言葉があるが、有名パティシエがつくるケーキなどは、通常の商圏を超えた顧客層を持っている。

《企業と個人にそれぞれ持ち味》

このように、菓子製造業を例にとっても、そこには、企業化された経営と個人経営があり、それぞれが持ち味を生かした企業活動を行っており、どちらが優れているとか、どちらの経営状態が良いとかは一概にはいえないのである。
なぜなら、それぞれが、明確なターゲットをとらえ、販売先を考え商品開発、品ぞろえをし、あるいは直販のみに限定することでほかとの差別化を図るなど、自社の強みを製造から販売まで一貫して展開しているからである。
これを今すぐに農業分野に置き換えることは困難である。しかし、他業種を参考に経営方針、進むべき方向を探ることは可能である。
ここでのポイントは、菓子製造業でいうと、企業化された経営体と個人経営の経営体は、両方ともに「自社の強みを生かしている」ことが最大のポイントではないだろうか。もちろん、企業化されたといっても、全国規模の大企業から、地域密着の企業まである。同じ企業とはいえ、それぞれがさらに強み・弱みを把握して、自社の仕事の領域(ビジネスドメイン)を明確にしているのである。
このように、消費者から見れば「菓子」というモノも「企業」がつくるモノ、「個人経営のお店」がつくるモノと多様な選択肢があるのである。そのことによって、消費者は、最寄り品から買い回り品、そして専門品と商品を選択することができるのである。そして、状況によって、あるいは人数によって、購入先や購入品を選択することができるのである。

《顧客志向の農業で販売チャネル拡大》

現状の農業ではどうであろう。最寄り品、買い回り品、専門品という区分は明確なものにはなっていない。
しかし、今後は、消費者に目を向け、消費動向を的確にとらえることで、商品ラインアップ(作付け品種)を充実させ、より顧客志向の作付けえと変化することが望まれるのである。
農業の企業化は、個人経営と対峙(たいじ)するものではない。農産品の提供を多くの販売チャネルで実現することで、企業化された農業ならではの作物や品種、そして、個人経営ならではの、こだわりや特色ある農産品が生まれるのである。
従来、ともすれば生鮮食料品は最寄り品か、買い回り品であった。しかも、それは生産者側の意図するところではなかったのではないだろうか。あるいは、そんな意識はなかったのではないだろうか。
今後は、生産の段階から「最寄り品」狙い、あるいは「買い回り品」をターゲットに、そして「専門品」を狙う。そういう消費から見た生産という視点や意識が必要になるであろう。必要なのは、「消費者」からの視点を意識することなのである。
そのことによって、販売先、販売方法といったターゲットがおのずと決まり、大規模経営の企業化された農業と個性を持った個人経営の間でその役割が変わってくるのではないだろうか。
企業化された農業と個人経営の農業がお互いに相手の弱いところを見るのではなく、消費者から見て、自社の強みを最大限に生かせるのはどのような方法があるのか、それが、両者の相互補完になるのだと考える。

次回は「業態開発」と題し、あまりなじみのない業態開発ということや、事業展開、農業に回帰する事業サイクルについて記す。

平成18年5月1日号『月刊ニューカントリー』626号掲載
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