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調査研究レポート

企業化へのステップ
第3回 農業を活力あるものに
重要なVI、進むIT技術
財団法人北海道農業企業化研究所企画部企画担当部長 上野 貴之

前回はVI、IT(※)を新しいインフラという視点で記した。今回は、VI、ITの具体的事例を農業のみならず、ほかの産業も参考にしながら記していく。

《パッケージやデザインで差別化》

前回のおさらいを少しすると。VIとは(Visual-Identity)、企業のシンボルマークやロゴといった、主にデザインなど視覚に訴え、イメージアップを図る戦術・手法である。
ブランド品といわれるものの多くには、独特のロゴがあり、一目見ただけで、その企業の商品であることが分かる。そして、偽ブランド品もそのロゴをまねし、あたかもその企業の商品であるかのように見せる。消費者にとっては、このロゴが目安になり、ある種の信頼の証しにもなっている。機能としては同じバッグでも価格が全く違う。そこには長年の技術、信頼、歴史といったさまざまな要素がロゴの中に凝縮されているのである。
それでは、農業以外の企業ではどのように活用しているのであろう。
自動車産業ではどうだろう。ネーミング、ロゴ、店舗イメージ、色使い。明らかにターゲットを絞り込んで、その世代、購買層を意識した使い方をしている。そして、同時に大切なことは、自動車にとって大切なことである、安全、耐久性をもイメージさせている点である。さらに最近は、環境や人間にとって優しいということをもイメージできるようなネーミングやデザイン、そしてロゴが使われている。
色や形(意匠)には、法則性があり、人間を安心させる色使い、不安にさせる形状などがある。実は、ロゴ一つとっても、そのようなセオリーを踏まえてつくられているのである。
私たちが農産物や農産加工品のデザインやネーミングを考えるときに、どれほど時間を費やしているだろう。
どんなに丹精込めてつくっても、不安をイメージさせる色使いの箱に入れてしまったら、果たして売れるだろうか?消費者の食卓をイメージしたパッケージ、専門料理店のカウンターを意識したロゴ、そんなことまでは農業者は気にしなくて
いいのだろうか。
確かに、長きにわたって農業者は出荷すればそれで終わりという時代が続いてきたのかもしれない。しかし、これからはもっと最終消費者を意識した部分までも農業の仕事として考えていかなくてはならないだろう。北海道という地域が持つ優位性(エリアポテンシャル)を農作物プラス、パッケージやデザインといったVI手法でさらに明確にし、差別化を図っていく工夫が必要である。さらに、従来は地域ごとに行ってきたデザインやロゴも広く消費地を求めると、北海道全体で統一性のあるデザインが必要になってくる。
このパッケージは道東のものだとか、これは春野菜だとか、消費者が一目で北海道を意識でき、季節や産地が分かるようなVI戦術を全道で展開していくことが有効策になる。
平成十七年度からHAL財団で行っている、VIに関する研究成果を十八年度はさまざまな形で全道に普及していく予定である。

《収益拡大に向けた情報技術の活用》

放送と通信の融合と言って、なるほどこれは使えるな!と思った人がいれば、ものすごく先見性があるか、情報通である。今、盛んに地上波デジタル放送の告知を行っているが、この技術は単に画像が奇麗に見えるとか、音声が臨場感あふれるというだけではない。例えば、テレビドラマで女優さんが着ている服。すてきだな、どこのブランドだろう?と思えば、その情報が入手できるようになるのだ。この技術は「双方向性」といい、今までのテレビが単に一方的に情報を送っていたのに対し、「双方向」によって、見る側からのさまざまな問い合わせに答えられるようになっているのである。
つまり、ドラマの食事のシーンでおいしそうなトウモロコシが出てくると、視聴者が検索ボタンを押す。「どこ産の何という銘柄。どこで購入可能。単価は・・・」という情報が視聴者に届くのである。そんな時代がもう来ているのだ。
さて、そのような時代がすでにそこまで来ている現在、これらのICT(※)の技術をどのように活用するのか。これがこれからの農業界の課題になってくるだろう。
従来のパソコンによる青色申告や農薬管理はいうなれば、生産部門での効率化を狙った利用である。しかし、今後は収益拡大に向けた利用をさらに進めていくことが肝心である。
北関東にある「ネジ」専門会社では、従来は取引のほとんどが建材会社や建築会社という限られたものであった。ところが、その会社がインターネットで「ネジ一本」から通販を始めたところ、個人の購入者が増えたという。今まで想定し得なかった顧客層を開拓することができたのである。
情報化が進むと、顧客のほうでも情報収集が進み、特定のものを求める傾向が強くなる。まさに、北海道の農産品のように、都府県とは違うもの、品質の良いもの、こういった情報が消費者にとっては重要な情報になっているのである。そして、すでに情報収集を行っている顧客層もいるのである。現在、ブームになっている「お取り寄せ」というのはまさにその一例である。
これらの情報流通と物流、さらには代金決済までの一連の工程を行えるシステムは、IT企業がビジネスとして確立したネットモールと呼ばれるシステムに代表される。しかし、なかなか参加する農業事業者は多くはないのが現状である。
HAL財団では、農場事業者にとって参加しやすいネットモールを、平成十八年度から整備していく予定である。

次回は「相互補完で農業を活力あるものに」と題し、個人経営の良さ、企業経営の強みについて記す。

※IT  Information Technology
ICT Information&Commu-nications Technology
従来は、ITと表記されてきたが、最近では、ICTと表記し、コミュニケーションも重要な要素であることを表すようになった。

平成18年4月1日号『月刊ニューカントリー』625号掲載
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