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調査研究レポート

企業化へのステップ
第2回 企業化にとって必要なもの
ITインフラの早期整備
財団法人北海道農業企業化研究所企画部企画担当部長 上野 貴之

二回目の今回は、企業化にとって必要なものと題し、経営資源、新しいインフラ(基盤)について記す。

《ポジショニングを決定する四つの経営資源》

一般的に、企業の経営資源というと「ヒト・モノ・カネ」そして最近では「情報」という四つのモノが挙げられる。この経営資源は、どれが大切というのではなく、どれか一つでも欠けると経営に問題が生じるものである。また、そのバランスも大切である。
資金がいくら豊富でも、それにふさわしい人材がいなければ企業活動は円滑に進まない。また、ヒトもカネもモノもそろっていても、情報がなければ、タイムリーな企業活動はできない。一度、自身の経営資源を再確認することをお勧めする。
これは、今はまだ企業(法人)になっていない農家も同じことである。
企業活動は、大きく分けるとこの四つに分類される。
製造業の分野で業務改善の手法として広く使われているTQC(トータル・クオリティー・コントロール)においても、問題点を見いだすロジック(論理)として、この経営資源を着眼点としている。
例えば、農産品の選別にばらつきが出たとしよう。
その場合、人手によるときには、「ヒト」、機械で行っているときには、「モノ」の視点で問題点を掘り下げていくということだ。
この経営資源は経営を論理的に見詰めるときに非常に有効な分類である。
自社の弱み、強みを把握し、どこに力を注げば良いのか、短期間でできるもの、中長期の時間が必要なものなど、合理的な判断に役立つ。

《新しいインフラ》

農業分野で基盤整備というと、土地や用水の基盤整備をイメージするかもしれない。そして、一般に基盤整備というと、社会基盤としての道路やダムなどを指していた。しかし、ここ数年大きく変わってきたものがある。いわゆるITである。インフォメーションン・テクノロジー。
多くの家庭にパソコンが普及し、インターネットが活用されるようになった。
総務省の情報通信白書によると、企業におけるインターネット利用率は九八・一%。
ほぼすべての企業で利用されていることが分かる。
調査によると、情報システムの導入目的は、「コスト削減・業務効率化」と「売り上げ拡大・高付加価値化」という二つに大きく分けられるが、平成十四年度と比較すると、十七年度白書では、「コスト削減・業務の効率化」が減少する一方、導入目的が「売り上げ拡大・高付加価値化」へとシフトしてきている。
つまり、多くの企業は情報システムをその技術進歩に合わせ、自社の経営に生かしていることが分かる。
一方、農家の現状はどうであろう。北海道庁農政部が平成十五年度に発表した「高性能情報機器整備状況調査」によると、インターネット利用率は、わずか十六・八%にとどまっている。
また、データは古くなるが、農林水産省が全国の販売農家を対象に行った「平成十四年度食料・農林水産・農山漁村に関する意向調査」の中で、農業経営へのパソコン利用目的を調査したデータがあるが、「簿記・青色申告など経営管理」が六一・四%、「栽培・飼育など生産管理」が四九・五%、「市況・気象などの情報管理」が四五・五%となっている。
このデータを見る限り、前途の企業の情報システム導入目的とは大きな差がある。
収益を増大させるためには、コストを抑える、販売を増やすということが必要だが、企業の情報システムの導入目的はまさにそこを狙っているのである。
しかし、ブロードバンド(高速大容量通信回線)の普及が、農村部を中心とした地域で遅れている現実がある。HAL財団が平成十六年春に北海道内の農業法人三五四社について調査を行ったところ、ブロードバンド提供エリア内に所在する企業は、二〇〇社、五六%余り。言い換えると、半分近くはブロードバンドを導入したくても導入できないという状況であった。世界規模の展開を行う農業企業は、グローバルなネットワークを構築し、戦略的な活用を展開している。ITは、戦略的経営には欠かせないものになっているのである。インターネットの普及によって、販路の拡大が地域や国内だけではなく、世界中に広がる可能性があり、また資材などの調達も多様性を増すのである。北海道農業の今後の発展のためにITインフラの早期整備が望まれる。

《デザイン・ネーミング》

北洋銀行とノーステック財団(北海道科学技術総合振興センター)が東京都内で行った道内の和洋菓子に関する調査によると、商品のおいしさでは高い評価を受けたのに対し、「商品の印象や名前だけで買いたい気持ちになるか」の項目では評価が低い傾向を示したという。これは、農産加工品でも同じではないだろうか。
今、多くの企業が力をいれているものに、VI(Visual Identity)がある。
企業のシンボルマークやロゴといった基礎的なデザインによって、イメージアップ、差別化を図ることである。良いイメージがビジネスを支え、ビジネスチャンスを広げるのである。
シンボルマークやロゴ、デザインはラベルなどに使われるほか、広告やホームページ、名刺などを統一デザインで展開することで認知度が向上する。
シンボルマークやロゴといったデザインが品質や信頼になるのである。今後は、北海道統一のデザインや地域を表すシンボルなどを販売力につなげていくことが必要となる。
HAL財団では、この重要性を認識し、平成一七年度から重点的に研究し、具体的に展開していく予定である。

次回は、「農業を活力あるものに」と題し、VI戦略、ICT利用の具体的事例について記す。

平成18年3月1日号『月刊ニューカントリー』624号掲載
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