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調査研究レポート

企業化へのステップ
第1回 企業化された農業とは
事業計画を策定できる経営
財団法人北海道農業企業化研究所企画部企画担当部長 上野 貴之

今回から十二回にわたり、企業化へのステップというテーマで、農業の新しいスタイルについて記す。
農業の企業化というと、イメージするのは、異業種からの農業参入を思い浮かべることが多いと思う。しかし、ここで扱うテーマは、そういうことではない。
今の農業を経営やビジネスという視点から見て、メリットやデメリット(リスク)を明らかにし、これからの時代の農業経営をどのようにしていけばよいのかをメーンに、そして企業化された農業経営を具体的に進めるにはどのような視点が必要かを連載していく。

企業化された農業経営は、法人化と似ているが、法人化イコール企業化ではない。
確かに、法人化されているほうが実務的に有利であったり、便利であったりするが、法人化したからといって企業化したとは言えない面もある。これから書き進める「企業化」にとって必要なものとはいったいどんなものなのだろうか。そして、従来の農業経営とはどこが違うのだろうか。

《収益機会を考える》

収益機会。つまり、収入源である。当たり前のことだが、農業にとって収入源は、米や野菜、牛肉や肉などの農産物、畜産物であり、その品質や収量が収入の鍵となってきた。ところが、この収入源は、天候に左右される、あるいは、豊作で価格が暴落するなど、なかなか安定的な収入源とは言えない状況にある。
そこで、その対策として農家は、自家製のジャムやジュースをつくり(加工品)、あるいは直接庭先などで販売を行い、収入の一部としている。
簡単に言うと、このような収穫だけに頼らない収入源をいかにつくっていくのか、それが大切なことである。もちろん、多くの農業経営者はそれを分かりきったことと思い、実践しているだろう。ではその比率は?こう問われると、すぐには答えられなくなるかもしれない。そして、今後の見通しは?この質問にはもっと答えにくいかもしれない。

《事業計画こそが企業化の第一歩》

私が最も書きたいことは、このことなのである。つまり、「計画」ということ。
今までの「計画」は「作付け」や「飼育」の計画が主体だったと思う。
これからは、それらとともに「収入計画」「支出計画」そして「販売(事業)計画」というさまざまな計画が大切になるのである。そして、その中でも特に大事なのが、「販売(事業)計画」だと考えている。なぜなら、支出は自分の意思(辛抱)で抑えることができるが、販売は自分の意思だけではなく、買い手の意思、つまりマーケットを見なくては計画を立てられないのである。私は、「企業化された農業」とは「販売(事業)計画」を策定できる農業経営だと言っても過言ではないと考えている。

《計画の活用》

販売計画を策定すると、当然、実績との差異が出てくる。その差異を「残念」とか「ヤッター」と終わらせていないか。実は、この差異の分析が非常に大事なことなのである。なぜ、売れなかったのか。その要因を「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」という経営資源要素に分けて見直してみよう。そうすれば、自分の経営でどこが弱いかが見えてくる。同様に、売れた場合にも。
そうすることで、自分の経営の強みが分かると思う。計画は作ることより、結果の分析が大切である。大きな企業では、この分析だけを専門に行っている部署があるくらいだ。

《「できる」から「勝てる」「もうかる」「続く」へ》

農業に限らず、仕事をしていると、ついつい自分のことに精いっぱいになってしまう。「できる」ことをやる。それは当然だが、「できること」だけをやっていても事業としては成り立たない。
今まであまりライバルというものを意識しなかった農業という分野。
しかし、スーパーには外国産のカットフルーツが並び、テレビでは外国の農業企業のコマーシャルが流れる。実は、諸外国の農業企業は、日本を巨大なマーケットとしてとらえ、販売活動を行っているのである。ライバルは府県の生産者だけではない。むしろすぐそこにいるライバルは、遠く離れた外国の農業企業なのである。

《事業計画と目標》

自分の経営において、強み、弱みを明確にし、複数の強みを持ち、それが弱みを覆い尽くせることができればいいのだが、なかなか強みだけでは、弱みをカバーできない。だから、弱みも徐々に小さくしていく対策が必要である。
強みをいつまでにどの程度にするか、同じように弱みをいつまでにどの程度にするか、これを明らかにすることが肝心である。明らかになったものこそが「目標」である。目標のない計画は意味がないと言ってもいいだろう。
もし目標がなければスケジュール表と同じになってしまう。
今、諸外国の農業企業が日本というマーケットのシェアを戦略的に伸ばそうとしている。そんな時だからこそ、私たちも「強み」「弱み」を把握して、生産だけではなく、収益という観点、市場という観点、消費者という観点、さまざまな観点で事業計画を策定する必要がある。どのようにすれば勝てるのか、どのようにすればもうかるのか、どのようにすれば続くのか、これをぜひ念頭に事業計画を作ってみよう。それが企業化の第一歩である。

次回は、「企業化にとって必要なもの」と題し、新しい概念のインフラ、経営資源について記す。

平成18年2月1日号『月刊ニューカントリー』623号掲載
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