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調査研究レポート

ベスト経営ウォッチング
第1回HAL農業賞神内大賞 (有)谷口農場の経営(旭川市)
多角化、複合化で農業生産のリスク分散
財団法人北海道農業企業化研究所企画部企画担当部長 上野 貴之

《賞の狙い》

HAL(ハル)農業賞には三つの部門があり、企業的経営の農業を推進させていく範囲(目標)となる農業企業、あるいは何らかの推進策をわれわれHAL財団(財団法人北海道農業企業化研究所)とともに考え構築していくことで、企業化が促進される農業企業、営農団体に贈られる。
多くの農業関連の表彰は、農業者の今までの実績、生産技術などに焦点を当てているが、HAL農業賞は、農業の新しい経営スタイルとなる企業的経営に目を向け、さらにそれを促進させる狙いがある。

《各部門賞》

最もHAL農業賞の狙いを表しているのが、経営部門賞である。
この賞は、独自の事業展開を行い、農業分野だけではなく、新しい事業領域を取り込むことで農業者の収益向上を目指す農業企業や地域の営農グループに贈られるものである。またさらに、近年特に重視される、企業の社会的責任を踏まえ、地域社会の一員としての活動も評価の対象になる賞である。
そして指導・支援部門。
この部門は、農業企業や地域営農グループに対して、生産技術や異分野である加工・流通、さらに新しい事業展開などを指導・育成する個人や団体・企業に贈られる。具体例を挙げれば、地域営農グループやコントラクター組織の活動の指導、また消費者、利用者の観点から農業企業や地域営農グループの活動を支援している人や団体に贈られるものである。
三つ目の研究部門賞は、農業界のビジネス拡大に役立つ生産技術や加工、流通、貯蔵などの研究開発を行った個人や団体、あるいは、ビジネスモデルの創造や実証研究を通じて、農業企業や地域営農グループの新たな事業活動を生み出す個人や団体に贈られるしょうである。
以上、三つの分野の中で特に優れた企業や団体に贈られるのが、大賞であるHAL農業賞神内大賞である。

《選考の視点》

このような枠組みの中で、HAL農業賞の選考を行った。
自薦、他薦も含め四四件の中から、模範的経営を行い、これからの北海道農業のリーディングカンパニーとなる法人となると、選考する側にもシビアな視点が要求される。HAL農業賞の選考には、設立者の神内良一、財団理事長の磯田憲一、そして、北海道日本ハムファイターズオーナーの大社啓二さん、北海道大学公共政策大学院院長の宮脇淳さん、北海道新聞情報研究所調査研究部長の木村篤子さんの三氏に外部選考委員を担っていただき、それぞれ専門の立場から意見をいただいた。

《光る経営センス》

四四件の候補者は、それぞれが、北海道の中で優秀な経営を展開し、あるいは今後が期待される企業であった。そのような中、大賞に選ばれた谷口農場を紹介したい。

《歴史と時代を見る目》

谷口農場は、北海道に入植したのが、今から100年以上も前という、いわゆる老舗である。そして、その歴史は単に年月を重ねるだけではなく、常に時代を見極める経営者の視点を持ち、事業展開を進めていった歴史の積み重ねであったといえよう。
昭和四十三年には、有限会社化し、給料制での従業員確保という当時としては非常に珍しい経営形態とした。まさに企業化の先駆けである。
そして時代の移り変わりとともに農政の変遷もあったが、同社は稲作を事業のベースにしながら、えのきだけの栽培、乳牛飼育などを取り入れ、経営の安定化を目指した多角化、複合化を進めていった。これは、天候や政策に左右されがちであった農業生産のリスク分散策であり、現代の企業経営には欠かせない視点である。
今年の事業展開のキーワードは、『今年こそ省エネルギー、高成果経営の実現』とのこと。さらに、従業員全員が共通の意識を持てるよう、「5S精神」(@スピリッツ=挑戦する気持ちAスペシャリスト=農の職人としてのプロ意識Bスピード=迅速な決断、果敢な行動Cスマイル=お客さまへの笑顔、職場での思いやりDスイープ=環境の整理・整頓)といった経営指針を定めている。
また収益力が高く、冬期間の収入にもつながる加工分野では、自家生産トマトジュースの加工だけではなく、にんじんを使ったキャロットジュース、みその製造など、商品ラインナップを増加させている。ジュース製造は、受託生産をするまでに成長を遂げている。
平成十四年には、ファームレストラン「赤とんぼ」をオープン。自社栽培の農作物を中心とした食事を提供している。
同社の顧客志向を端的に表しているのが、作物の栽培方法である。土地の特性を見極めながら、市場ニーズに合わせ「無農薬」「低農薬」「減農薬」と幾つかの栽培方法を取り入れている。
あらためて、同社の経営ポイントを整理すると、@明確な事業方針、事業指針Aリスク分散B収益機会、収益基盤の充実C農業を核とした業態開発と事業化D顧客志向。
このような企業経営が今回の受賞につながったものであり、またHAL財団が提唱する農業の企業化のまさに典型的な成功例であろう。
谷口農場のますますの発展と、今後同社を目標とし、成長する道内の農業法人に期待するところである。

平成17年11月1日号『月刊ニューカントリー』620号
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